近年、日本では人口減少などで「空き家」問題が増加、深刻化しています。
例えば、「自身が育った家に思い入れがある」「物置として必要」「解体費用をかけたくない」「仏壇などが捨てられない」など、そのまま5~10年空き家にしておく方がほとんどです。
空き家に対する選択肢は「利用・活用・売却・保有」など、いくつか存在します。相続人のライフプランや地域性、物件の状態などによってどのように管理していくのが最良か、検討してはいかがでしょうか。
空き家は3種類に分けられる
空き家は、下記3つの種類に分けられます。
①「売却用・賃貸用」
→住む人がいなくなった家の買い手や借り手を探している状態
②「二次的住宅」
→別荘など、普段は人が住んでいない家
③「その他の住宅」
→管理者不明で放置されている状態
①②とも、基本的には空き家ですが「所有者が管理、利用」している状態です。
日本で問題になっているのは、「買い手や借り手」を募集しているわけでもなく、そのまま放置されている③の状態で、空き家全体の41%にのぼり、その数は年々増えています。
その理由は、少子高齢化や世帯構成の変化で世帯主が死亡しまっているケースがほとんどです。同時に、空き家譲渡のほとんどが相続で、親や血縁者から譲り受けることが半分以上を占めます。
空き家を放置するリスク
空き家は、放置していると様々なリスクがあります。
・老朽化による建物の倒壊
・不法侵入や放火のリスク、犯罪の温床
このような現象が空き家周辺エリアに及ぼす影響は大きく、資産価値が大きく下がってしまう恐れすらあります。最近では、急速に放置された空き家が増加してきたこともあり「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。
これにより、保安状況が危険な場合や衛生上有害となる場合など、適切な管理がされていない空き家は、「特定空家等」に認定され、助言や勧告に従わない場合には、固定資産税や都市計画税の優遇から外され、課税されるというものです。
「空き家」譲渡相続時の特例
相続等により取得した空き家の譲渡所得3,000万円特別控除の特例
被相続人の死亡により空き家になった不動産を相続により取得した相続人または※(1)包括遺贈により取得した受遺者が売却し適用要件を満たした場合には、当該不動産を売却した際の譲渡所得から3,000万円を控除することができます。
※(1)相続財産の全部又は、一定の割合の方法によって遺贈すること。
① 相続日から3年後の年末まで、かつ、特例の適用期間である2023年12月31日までに譲渡する。
② 相続開始の直前に、被相続人が一人で居住していたものであること※(2) 。
1981年5月31日以前に建築された区分所有建築物以外の建物であること。相続時から売却時まで、事業、貸付、居住用に供されていないこと。相続により土地及び家屋を取得すること。※(2)2019年(平成31年)4月1日以降の譲渡については、③の要件を満たした場合も被相続人が相続開始の直前に居住していたものとして認められます。
③ 被相続人が介護保険法に規定する要介護・要支援認定を受け老人ホーム等に入所し、相続の開始の直前まで老人ホーム等に入所をしていたこと。また、入所した時から相続の直前まで一定の使用がされ、その者以外の事業用、貸付、居住の使用がされていないこと。
④ 売却金額が1億円以下で、相続してから空き家のままであること。
⑤ 建物が耐震基準に適合または、修繕している。(解体して土地のみの売却もOK)
他の特例との適用関係
自己居住用財産の3,000万円特別控除又は自己居住用財産の買換え特例のいずれかとの併用が可能です。(同一年中に空き家の3,000万円特別控除と自己居住用財産の3,000万円特別控除とを併用する場合には、2つの特例合わせて3,000万円が控除限度額となります)住宅ローン控除との併用が可能となります。
特別控除が受けられるのは、相続開始の日から3年後の年末までです。
保有し続ける場合は、固定資産税や都市計画税、管理などの維持費などがかかります。自身の持ち家などがあり、居住予定が特にない空き家は、売却したほうがコストを抑えられる場合があります。また、売却の場合は財産分与などの理由で所有者が複数人なら、全員の合意が必要になります。早めに話し合いを設け、状況説明や助言の席に同席してもらいましょう。
その際、生前整理・遺品整理も時間と手間がかかる場合があり、一般廃棄物免許をもつ業者に依頼せざるを得ないケースもあります。処分費がかからないように早めの対応を心がけましょう。
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